宇野常寛著「母性のディストピア」-人を世界を愛する批評家
宇野常寛著「母性のディストピア」を読みました
もの凄く読み応えのある本で、ドストエフスキーを読んだ時の、ページをめくってもめくっても減らない感覚を久しぶりに味わいました
決して苦行ではなく、著者の宇野さんの思考回路によって、難解な迷路を出口まで誘導してもらえる、ある種の居心地の良さがありました
こんな方にオススメ
- この時代にモヤモヤ感を抱いている人
- 「おたく」だった人たち
- これからの時代を築いていく若い世代
- 若い世代を支えていく大人たち
母性のディストピアの意味
ディストピアとはユートピア(理想郷)の正反対の社会を表す言葉です
「母性のディストピア」とは、母性によって見させられている(もしくは自らが進んで見に行った)ナイトメアであり、戦後日本が陥った社会の状況を表す言葉です
日本は母性によって抱え込まれた「ディストピア」の世界を生きている
長すぎた戦後を、アメリカの核の傘に隠れて「永遠の12歳」を繰り返し続ける日本の象徴的に表した言葉だと言い換えることができます
内容を要約してみる
ハードカバー本で約500ページほどある本なので、なかなか要約することは難しいですね。。。
この本に書かれている内容は主に「宮崎駿」「富野由悠季」「押井守」の三大アニメーターの作品とその作品に込められた思いを通じて、長すぎた戦後を続けている(繰り返し生きている)日本の在り方を提示した内容です
「映像の世紀」から「ネットワークの世紀」へ
映像(テレビや映画)が人々をつなぐ最大の媒介だった時代は終わり、現在はネットワークの世紀へと移行しました
「ネットワークの世紀」を生き抜くために日本が、日本人がどのような生き方を考え方を模索し、方向転換をしなくてはいけないのか
もう一人の巨匠「庵野秀明」氏が手掛けた「シン・ゴジラ」から、日本が進むべき道を示唆しています
「母性のディストピア」とは戦後の日本が陥った、この閉塞した状況を打破するために、我々が何をしていくのかを提示した本です
現状打破するために求められる世界への道のりを
【本を読み解くヒント】
上記では、ネットワークの世紀を「魔法の世紀」として現代の魔法使い「落合陽一」さんに触れています
デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂
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上記の2冊は落合陽一×宇野常寛が手掛けた
「魔法の世紀」と「デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂」
「ネットワークの世紀=魔法の世紀」を生き抜く上で必読の本です。。。と書いて置きながら、私もまだ読んでいません。。。
落合陽一さんが書かれた本で読んだ本は「日本再興戦略」です
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落合陽一著「日本再興戦略」-天才が掲げる日本の未来に期待を持つための再興戦略
「母性のディストピア」を読み解き、未来に向けて進むためにも、ぜひ落合陽一さんの本を読むことをオススメします
本を読み終えると世界が変わる⁉
「母性のディストピア」は作者「宇野常寛」による戦後アニメーションとの長い対話です
読者は、宇野さんと戦後アニメーションの長き対話を聞き、現実世界を紐解いていきます
良質な本は、読後に街を歩くと世界がこれまでと少し違って見えるようになります
「母性のディストピア」も世界が変わったように見える現象が起こりました
待ちゆく人たちが、「母性のディストピア」からの脱出を夢見る人たちに
世界を覆う殻が、そしてその割れ目が
絶望と希望が同居している世界
どこか孤独であり、それでも愛する世界の存在
安全な母胎からはみ出した世界から現実を見る
人を世界を愛する批評家
「母性のディストピア」を読んでいて、常に心の中にあったモノは宇野常寛という批評家が、人を愛し、世界を愛しているということです
「おたく」は自分の愛したものにとことん没入できる生き物です
題材として扱っているアニメーションではなく、宇野常寛さんが視線を向けているものは、アニメーターであり、この世界です
アニメーションの世界だけでなく、制作者であるアニメーターの心の葛藤を敗北を
敗北から救う術の模索を
そして、現代を生きる日本人が生き残るための策を、懸命に考えています
宇野常寛という人物が、この世にどれだけ絶望したのか。幾度となく立ち上がり、希望を見出そうともがいているのか
宇野常寛という人物は「世界に対する愛」を持った批評家です。
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