岩井俊二著「ラストレター」を読んでー涙が溢れるラストー
岩井俊二著「ラストレター」を読みました
岩井俊二さんは私が最も尊敬する映画監督です
最も好きな映画は「Love Letter」です
このオープニングを何度繰り返し見たか分かりません
映像の美しさ、物語の構成力、どれをとっても完璧な映画です
「Love Letter」も「ラストレター」も手紙のやり取りが物語の中心にあります
ただ、「Love Letter」は95年の作品なので、手紙でのやり取りが時代的に成立していましたが、「ラストレター」が書かれたのは2018年、スマホの登場により手紙でのやり取りが普通ではなくなってしまった時代です
その中で、手紙をモチーフにして作品を作ることは、どこかファンタジーになってしまいそうですが、そこは岩井俊二監督です
現代で手紙のやり取りをしても違和感が無いような物語にしています
しかも、手紙のやり取りをしているのが、1人だけではないというのが凄すぎます
主役の乙坂のもとには2箇所から手紙が届きます
その設定の見事さよ
物語自体は決して明るいものではありません
パンドラの箱のように絶望の中に希望が含まれた物語です
岩井俊二監督はこれまで原作のある作品を撮ったことがありません
すべて岩井俊二監督が原作を書いています
自ら本を出版して、映画を作るという
そして、映画も小説もどちらも天才的に面白いという凄まじさ
前作は「リップヴァンウィンクルの花嫁」でした
この作品は、映画と小説どちらが心に刺さるかといわれたら、自分は小説の方が心に刺さりました
小説をお読みでない方はぜひ読んでみてください
岩井俊二監督の物語を紡ぐ才能に震えます
「ラストレター」の凄み
ラストレターの凄みは、物語の構成力にあります
スマホが普及しインタラクティブ、双方向が当たり前で簡単に繋がれる時代に、非インタラクティブな手紙を中心に据えた作品
もう1つのインタラクティブな手紙のやり取りは、心から会いたいと願っている相手
2箇所から届けられる手紙の差出人には同じ名前が書かれています
40歳の主人公と差出人の間には空白の期間があり、その空白の期間が主人公を苦しめます
止まってしまった時間
主人公の時間を動かすための物語でもあり、時間は絶対に戻ることはないという普遍的であるからこそ、日常を生きていると忘れてしまいそうになるテーマが主軸におかれています
通っていた中学校が廃校となったというのは、時間は一方通行で進んで行くということのモチーフであると思います
その廃校での出会いはまさに現代との出会いです
フラグの回収なんていう安っぽい言葉では表現したくない、見事なストーリー
そして、ラストの「遺言」は涙なしでは読めませんでした
時間を戻すことは出来ないけれど、今の自分を築き上げているのは過去の自分です
人は傷つきながらボロボロになっても、前に進むしかありません
過去にしがみついて動かなくなってしまうこと、現在をこれでよしと諦めてしまうことは、とても勿体ないことであり、それは穏やかな自殺です
人生を自発的に生き抜くために、過去の自分に傷つけられることは、成長の第一歩なのではないか
そんなことを考えさせられる小説でした
そして、岩井俊二監督の紡ぐ文章の美しさは変わらずに唯一無二です
そして、「ラストレター」は2019年に映画化される予定です
広瀬すずちゃん、神木隆之介君、福山雅治さんが出演されるという豪華さ
そして、プロデューサーが川村元気さんと、これまでにない超強力なメンバーが集結しています
久しぶりに映画館で観たい映画になりそうです