よしもとばななさんの小説は心の時間軸で書かれた稀有な作品
よしもとばなな著「スィートヒアアフター」を読んでいます
10数年前によしもとばなな作品にハマり、その当時に発表されていた作品はほぼすべて読んでいたのですが、「王国」4部作を最後に遠ざかっていました
今年は本を100冊読むことを目標にしており、100冊達成ペースで読んでいます
その中で、小説は最果タヒさんの「星か獣になる季節」のみで、残りは実用書やエッセイや哲学書を読んでいます
【関連記事】
最果タヒ著「星か獣になる季節」を読んで平等とは何かを考える
よしもとばななさんを読みたくなったのは、おそらくヒマラヤ秘教のシッダーマスター「相川圭子」さんの本を読んだからだと思います
今の自分がよしもとばななさんの小説を読んだ時に、どのように感じるかを知りたいというのもありました
物理的な時間ではなく心の時間が軸
よしもとばななさんの作品は、物理的な時間が軸ではなく、主人公の心の時間が軸になっています
ばななさんの作品は物語的ではないんですよね
物語の基本に起承転結があります
よしもとばななさんの小説は分かりやすい起承転結はなく、たいていの作品は「起」で大事件が起きるか、または「起」の前にすでに大事件が起こっているかというストーリーが多いです
「スィートヒアアフター」も出だしにいきなり主人公が事故にあって、恋人を亡くします
サスペンスなら、この事故が仕込まれたもので、裏で大事件が隠されている
推理ものなら、自己と見せかけた殺人で主人公が新たなパートナーと共に事件の真相を解き明かしていく
ベタなストーリーなら、そういう展開になっていくのですが、よしもとばななさんの作品はここから大きなストーリーは展開されて行きません
主人公が大事件をだいたい受け入れると言いますか、受け入れてから過去と現在を確かめながら生きていきます
物理的な時間が軸となっているストーリーでは考えられない展開ですよね
運命から抗うためのストーリーではなく、運命と共に生きているストーリー
自分の外側で起こったことと、自分の内側に起きている変化。そのどちらに軸がおかれているのか
よしもとばななさんにとっての世界は、自分の内側にあるんだろうなと
その生命的な感覚がとても心地いいんですよね
内側の世界に起こる変化を楽しむ生き方
よしもとばなな作品の主人公たちの特徴として、自分自身を主観と客観の両方で捉えているというものがあります
自分の人生を客観的に楽しむ感覚
一流のビジネスマンの特徴に、対応できるタスクと対応できないタスクを分けるというものがあります
自分自身で考えて行動すれば対応可能な問題と自分自身ではどうしようもない問題
たとえば、電車が遅れてきた場合、電車が遅れてきたという問題は自分自身ではどうしようもないので、電車が遅れてきたことに文句を言っても仕方ありません
電車が遅れてきたことは受け入れて、では待ち合わせ時間に遅れないためにどうしたらいいのかは自分で対応できる課題です
電車が遅れてきたことにイライラしたり、文句を言っても仕方ないですよね
ここで電車が遅れてきたことに責任を押し付けるのではなく、では、自分が今出来ることは何かを考える人になろうねという話です
さらに、遅れてきた電車に対してどういう感情が芽生えるかを楽しむことが出来る人が、自分を客観視できているということかなと思います
意外とイライラしてるな自分と、イライラしている自分を客観視できるか
運命に対して抗うことが間違っているというわけではなく、抗うことも必要だし流されることも必要です
人生はロールプレインゲームみたいなものとはビリギャルの坪田さんの言葉です
【関連記事】
坪田信貴著「人間は9タイプ 仕事と対人関係がはかどる人間説明書」を読んで
自分自身が主人公のゲームを、自分自身が操作する感覚を持てるのかどうかって、生きやすさにもつながっていくように思えます
自分自身の人生は自分で決めることだけれど、自分の意志では決められない大きな流れみたいなのってあるよねと
その感じを、神様だったり、運命だったり、カルマだったり、遺伝子だったりを理由にします
自分ではどうしようもないものに、感情むき出しになるのか、受け入れるのかもしくは抗うのか
物理的な時間は自分ではコントロールできませんが、心の時間は自分でコントロールできます
何かを乗り越える時間は人それぞれです
この人生をどんな時間の流れで過ごしていきたいのか
実は時間は軸を変えれば、自分でコントロールできるものなのです
物理的な時間は、生→死へと向かう時間でしかないのです
誰かの人生を生きている人と自分の人生を生きている人は、同一の時間軸にはいません
自分の人生の時間に、どのようなスタンスで迎え入れるのか
よしもとばななさんの作品では、物理的な時間ではない時間軸が形成されています
その感じを味わえる小説はやはりいいものだと思います